先輩×後輩対談
自動車触媒開発
純粋に性能を高めれば、良い触媒ができるわけではない――エヌ・イー ケムキャットの開発者たちは日々、触媒の奥深さを感じながら開発を進め、顧客である自動車メーカーの要望に応えています。当社の自動車触媒開発部を代表して、2名の社員が入社の動機や触媒開発の醍醐味、未来への思いを語ります。
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先輩
萓田 佑斗工学研究科/応用化学専攻修了
研究開発センター 自動車触媒開発部
ディーゼル触媒課 マネージャー -
後輩
杉浦 圭先進理工学研究科/応用科学専攻修了
研究開発センター 自動車触媒開発部
ガソリン触媒課
※所属・仕事内容は取材当時のものです。
Talk theme 01触媒の可能性を信じて――
応用化学を専攻した二人が
エヌ・イー ケムキャットに入社した理由
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杉浦さんは学生時代に応用化学を専攻していたそうだけれど、当時から触媒に関心があったのですか?
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はい、学部時代に天然ガスを転換する化学触媒の研究に取り組んでいたのですが、修士課程に進学後、国のプロジェクトで自動車エンジンの熱効率を高めるための研究に参加したことから、自動車触媒に興味を抱くようになりました。萱田さんは学生時代、どんな研究に携わってきたのですか?
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私の場合、杉浦君と逆で、学部時代に自動車触媒の研究に従事し、大学院に進学後は水素製造に関わる触媒について研究しました。
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なぜ触媒に興味をもったのですか?
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一言でいうと、「触媒の可能性の大きさ」を感じていたから。就職活動も、触媒メーカーを中心に検討しました。
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そうなんですね。私は学生時代にリーマンショックを経験したせいか、「大学や大学院での学びを仕事に生かそう」という気持ちよりも、「世界と戦える日本のメーカーに就職したい」という気持ちが強かったように思います。
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それは良い考えだと思いますよ。すぐに当社を見つけたのですか。
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「世界を代表するメーカーと戦ったときに生き残れるのは、どんな企業だろう」と考え、オリジナルの技術を持つ企業だと自分なりに考えました。そこで、触媒や機能性材料を軸に探していった結果、当社を志望するようになりました。萱田さんはなぜ当社に入社したのですか?
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私は「大学で学んだ専門を生かせる会社」を探していたので、比較的スムーズに当社にたどり着いたように思います。日本を代表する触媒メーカーだし、開発環境も恵まれています。特に、研究開発から量産化まで、ものづくりを一貫して担っている点に惹かれました。
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萱田さんも私も、エヌ・イー ケムキャットに大きな魅力を感じて入社を決めたのですね。
Talk theme 02性能向上と劣化モードのバランスを取り、
実用触媒としての価値を高める
――触媒開発の醍醐味
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当社の自動車触媒は日本のあらゆる自動車メーカーに採用していただいています。非常に規模の大きな事業であるため、ガソリン車用触媒を開発するガソリン触媒室と、ディーゼル車用触媒を開発するディーゼル触媒室に分かれて開発を進めています。
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萱田さんはディーゼル車用触媒、私はガソリン車用触媒と担当が違うんですよね。具体的に、どのような業務を担当しているのですか。
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触媒の開発に加えて、すでに採用されている触媒の技術フォローも仕事に含まれます。これまでは乗用ディーゼル車(以下・LDD)向け触媒の開発を担当していましたが、2019年の冬からバス・トラックディーゼル車(以下・HDD)向け触媒開発を担当しています。
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私が当社に入社したとき、萱田さんは入社7年目でチームを引っ張っていくような存在でした。
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もちろん私にも新人時代があって、最初の数年間は先輩や上司に指導いただきながら、自分が担当する案件に全力で向き合ってきました。お客様にヒアリングした内容をもとに、要素技術を積み重ねて試作した触媒を評価する。今思うと、担当案件に集中した数年間が、私の土台になっているように思います。
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確かに、当社は上司や先輩が若手社員を手厚くフォローしてくれるので、じっくり開発に取り組むことができますよね。私も先輩方の指導のおかげで、以前に比べてより多くのテーマを持つようになりました。最近は、GPFを用いたPM(粒子状の物質)の除去率を高める研究を行ったり、新規材料の検討も進めています。
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杉浦さんはどこに触媒開発の楽しさを感じますか?
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たくさんありますが、一番は「自分が考えたアプローチによって、お客様が要求する性能を引き出せること」ですね。触媒が起こす化学反応は視覚的に観察することが難しく、それ故に未だ不明な点もたくさんあります。このような状況のなかで、いかにして触媒の性能を伸ばしていくかを考え、実験と検証を重ねていくことになります。だからこそ、性能を伸ばすためのキーポイントを見つけることができたとき、まるでブラックボックスの一端を解明できたような気持ちになります。
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なるほど。開発ならではの醍醐味を感じているのですね。
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実は学生時代にも同じような経験をして、それが研究開発職を目指すきっかけになっています。だから当社に入社して、同じ経験ができることをすごくうれしく感じますし、開発を進める上でのモチベーションにもなっています。
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大変な面もあるけれど、それよりもやりがいのほうが大きいと感じるのだから、開発者冥利に尽きますよね。
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触媒開発の楽しさはまだまだあって、例えば当社は触媒のメーカーですから、実用触媒としての視点も求められます。例えば自動車触媒を使用した際の劣化モードの研究は、当社で初めて携わった分野です。
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触媒開発には純粋な性能向上を目的としたものと、市場での劣化モードを予測した劣化抑制の開発があって、どちらか一方だけを極めても、良い触媒にはなりません。時にはトレードオフになる双方のバランスを取ることによって、触媒の総合性能として評価されます。それこそ触媒開発の段階で、複数の劣化モードを想定した加速耐久を実施することもあります。純粋な性能向上と予測した劣化モードのバランスを取って総合性能を予測するところに、実用触媒の開発の面白さがあると思いますよ。
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とても奥が深いですよね。実際、気温や湿度など外的環境がわずかに異なるだけでも、排気ガスに変化が見られます。さまざまな排気ガスが変動する中で、確実に触媒の性能を出していくことが、私たちのミッションなんですよね。
Talk theme 03CO2排出ゼロやゼロエミッション――
私たちだからこそ、できることがある
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萱田さんはディーゼル車用触媒開発の経験が豊富にあって、何度もコンペを勝ち抜いていますよね。LDDからHDDのチームに移って間もないのに、早くも萱田さんのチームがビジネスを獲得しています。
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HDDチームには上司と後輩がおり、後輩へ指導・教育や他部署との連携など私が中心となって進めていきました。チームのメンバーはもちろん、さまざまな部署の協力を得られたからこそコンペに勝ち抜くことができたのだと思います。
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ディーゼル触媒課のメンバーはもちろん、他部署の先輩も萱田さんのことを信頼しているのは、何よりも萱田さん自身が優秀な開発者であると同時に、周囲とのコミュニケーションを大切にしているからだと思うんです。私も萱田さんのように、周囲に信頼される開発者になれたらと常に思っています。
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私も、杉浦さんが仕事に取り組む姿を見て学ばせてもらっているんですよ。特にディスカッションで活発に意見交換をしている点が素晴らしいと思います。他のメンバーも杉浦さんに刺激を受けている様子が伝わってきますし、何よりも杉浦さんが活発に発言できるのは、普段からデータを深く理解、考察されているからだと思うんです。
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ありがとうございます。自動車触媒の開発に携わる私たちには、大きく2つの使命があると思うんです。一つは、年々強化されている排ガス規制に対応し、お客様のニーズに引き続き応えていくこと。もう一つは、二酸化炭素排出ゼロやゼロエミッションを達成して、持続可能な社会の実現に寄与することです。
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同感です。既存ビジネスを強化するとともに、新規ビジネスにチャレンジしていくことで、これまで以上に力強く自動車業界を支えていくことができると信じています。幸いなことに、当社は開発重視の経営を行っており、指導員制度を採用するなど教育・研修の充実化にも力を入れています。加えて近年は若手社員のチャレンジを支援する人事システムを導入するなど、教育・人事体制のさらなる強化も図っている。就活生の皆さんが当社に入社する頃には、さらに働きやすい環境が実現していると思います。
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エヌ・イー ケムキャットだからこそ社会のためにできることがたくさんあります。その一つひとつを、私たちの力で実現していきたいですね。
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持続可能な社会のために、ともに力を合わせて頑張りましょう。