上司×部下対談
化学触媒開発
「よく見、よく調べ、よく考える」――エヌ・イー ケムキャットの研究開発センターに受け継がれてきた研究マインドに踏み込みながら、同じ大学の研究室出身で、上司と部下という立場で日頃から研究開発に取り組む2名の社員に、触媒開発のやりがいや仕事に向き合う姿勢、これから挑戦したいことなどを語ってもらいました。
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上司
水﨑 智照薬学研究科/薬科学専攻修了
研究開発センター 触媒開発2部
シニアマネージャー -
部下
桑田 頌子薬学研究科/薬科学専攻修了
研究開発センター 触媒開発2部
※所属・仕事内容は取材当時のものです。
Talk theme 01同じ研究室出身の二人が同じ部署で化学触媒の開発に挑む
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桑田さんと初めて会ったのは入社前、当社の面接でしたよね。
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そうですね。水﨑さんが面接官、私が就活生という立場でお会いしたのが初めてです。
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しかも私たちは同じ大学の研究室に所属していたのですよね。
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実は研究室で時々水﨑さんの名前をお聞きしていたので、採用面接で初めてお会いした時はかなり緊張しました。
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桑田さんは自然体でお話してくれて、自身で思うほど緊張しているようには感じられませんでした。むしろ、自身の研究テーマについて他の面接官にもわかりやすく説明しており、「優秀な学生さんだな」という印象を抱きましたよ。
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ありがとうございます。就職活動中、複数の企業を検討しましたが、エヌ・イー ケムキャットの採用面接は回数が多く、面接官の方の数も多かったように思います。また各面接の合間に若手の先輩社員と話す機会があり、入社前のイメージと実際に働いてみた率直な感想を聞くことができ、不安が解消されたことをよく覚えていますし、当社の「風通しの良い会社風土」が伝わってきました。社員の皆さんの人柄の良さに触れて、「この方達と一緒に働きたいな」と思ったことも、入社動機の1つですね。
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実際に入社していただけてよかったです。入社後の当社の印象はどうですか?
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入社してすぐの印象は、「配属先の部署で水﨑さんと再会できて良かった」と思いました。私が入社した年は、ちょうど水﨑さんが現部署へ異動になったタイミングですよね。
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私もある意味で桑田さんと同じ新鮮な心持ちでの再スタートでした。
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前部署では、燃料電池用触媒の開発を手掛けてこられたとお聞きしました。
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そうですね。燃料電池用触媒は先行開発要素が強い研究テーマでした。一方、現部署ではもう少しお客様のビジネスに近い触媒開発を担当しています。私のグループでは主に水素化反応向け固体触媒の研究開発と製品化立ち上げなどを進めています。
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化学触媒は形や見た目によって「粒状」「粉末」「錯体」の3種類に大別でき、私は粉末触媒の開発業務を担当しています。具体的には「目的の反応に対する触媒活性の向上」という目標に向けて、触媒の調製法を検討し、物性解析や性能評価をおこなうことで、改良を進めています。
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桑田さんは学生時代に粉末触媒を扱った研究を行っていたので、その知見を発揮できると考え、現在の開発案件を任せました。
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学生時代に学んだことを活かせていることもあって、毎日楽しみながら触媒開発に携わっていいます。
Talk theme 02「よく見、よく調べ、よく考える」
諸先輩方から引き継がれてきた研究開発マインド
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桑田さんは、入社からこれまでを振り返ってみて、印象に残っていることはありますか?
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先輩方の面倒見が良くて、親身に指導してくれたことが印象に残っています。私の指導員は2つ年上の女性研究員でした。優秀な先輩で、新人の頃は「2年後、私も先輩のようになれるだろうか」と考えることが多かったですね。
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当社の研究開発センターには、さまざまなバックグラウンドをもつ研究員が在籍していますからね。若手の研究員でも、学生時代の専攻や経験を活かしながら、実績を積み重ねている方が多いですよ。
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指導員の先輩からは業務の他にも会社の基本ルールや社会人としての心構えも学びました。また上司の水﨑さんからは研究開発の考え方を教えていただきました。この1年、先輩方や水﨑さんに指導していただいたことを何度も振り返ってきました。
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「よく見、よく調べ、よく考える」ですね。
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そうです。特に水﨑さんは何度もその言葉を投げかけてくれました。たとえば実験結果に対する見解について問うと、水﨑さんはすぐに答えを言うのではなく、議論を交わしながら一緒に答えを導いてくれました。ときに深い質問を投げかけられ、そのおかげで論理的に考えて自分の言葉で説明する力が身につきました。
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「よく見、よく調べ、よく考える」は私が前部署でお世話になった上司から教え込まれた考え方で、私のオリジナルではないですが、研究開発に対する当センターの根っことなるマインドを端的に表現しているキーワードだと思っています。自分自身の仮説を立て、その上で実験を行い、アレコレと考えながら素直に観察を行う。結果がどうであれ、自身の仮説に対して、どこまで検証ができたのか、どんな気づきを得たのか、その気づきをもとに次の実験にどう活かしていくのか。桑田さんと議論をする時には、このような問いかけを心がけていました。
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とてもありがたいです。特に入社1年目は、実験結果を見て「あれ?変だな」と思うような結果が出たら、すぐに水﨑さんに報告していました。
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桑田さんと議論するのが、日々の業務のルーティンになっていましたね。
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ところで水﨑さん、覚えていますか? 前例がない開発案件で壁にぶつかっていた時に、ある試薬を使いたいと言ったことを。
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もちろん覚えていますよ。桑田さんは、事前検討で最も効果が出なかった試薬を「あえて使いたい」と提案してくれましたね。桑田さんの熱のこもった考えを聞いて、ゴーサインを出しました。
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あの時はうまく理論立てて説明できなかったのですが、水﨑さんが若手研究員である私に裁量を与えてくれたことが、何よりもうれしかったです。
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結果的に、求める性能を引き出すことができて驚きました。後々の検証で、効果が出た要因は解明できましたが、「よく見、よく調べ、よく考える」を真摯に実践してくれる姿に、私自身も嬉しかったですね。開発業務においては、自分で手を動かし、よく観察し、良い意味での“違和感”を得る感性が大切だと実感した出来事でした。
Talk theme 03トライ&エラーを繰り返しながら、求める性能に近づける
より良い製品を市場に出すには、他部署との連携が不可欠
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水﨑さんが話してくださったように、当社には、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まっていますよね。学生時代の専攻分野も多種多様で、異なるバックグラウンドをもつ先輩方と日頃から議論を交わすことで身につく知識もたくさんあるように思います。
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研究開発の仕事は本質的にトライ&エラーの繰り返しですから、日頃から仲間と議論を交わして、ヒントを見出す姿勢が大切だと思います。思わぬ気づきから新たな仮説やメカニズムを発案できることもあり、そこに私たちの仕事のやりがいがありますね。
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同感です。また、自分が携わった触媒が製品化されるのを見届けられることもやりがいのひとつです。一方で、製品化されることを考えると、製造工程を意識して開発に取り組む姿勢が重要であり、この姿勢はメーカーの開発部署に配属されることで身についた視点です。
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当社のようなメーカーの場合、ラボスケールから量産スケールを経て、お客さまに安定した品質の製品を届けることがミッションになります。そこに至るまでには製造はもちろん、品質保証、分析、あるいは営業など、さまざまな部署の社員の協力があってはじめてお客様に当社製品をご活用いただける。そういう意味では、部署間の連携を強く意識することも、研究開発においては重要な視点ですね。
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なるほど、勉強になります。水﨑さんは、今後私たち若手研究員に期待することはありますか?
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これまでお話してきたように、「よく見、よく調べ、よく考える」の習慣を身につけて成長していただけたら嬉しいです。そして、そこから得られた気づきを起点にしたオリジナルのコンセプトで開発を進めていく楽しさを見出していってほしいですね。桑田さんは今後、挑戦したいことはありますか?
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私は、現在担当している触媒が製品化されることを当面の目標に掲げています。いつか自分が設計した触媒が採用され、医薬品や化学製品として多くの方々の役に立つ日が来たらといいなと思っています。
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ステキな目標ですね。エヌ・イー ケムキャットの研究員として一緒に頑張っていきましょう。