先輩×後輩対談
燃料電池用触媒開発
二酸化炭素の削減や、地球温暖化の防止など、地球規模で「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みが進んでいます。当社は、クリーンなエネルギーとして知られる燃料電池用触媒の開発にいち早く取り組み、すでに多くの自動車メーカーの要求に応えてきました。燃料電池用触媒の開発に携わってきた2名の社員が、「未知の領域を切り拓くやりがい」を聞かせてくれました。
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先輩
中村 匠理工学研究科/化学専攻修了
生産本部 つくば事業所 生産技術室
マネージャー -
後輩
青木 智史農学生命科学研究科/応用生命化学専攻修了
研究開発センター 化学触媒開発部
つくば化学触媒課
※所属・仕事内容は取材当時のものです。
Talk theme 01多様な専門性を備えた仲間とともに、
燃料電池用触媒の開発に挑む
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当社が自動車触媒の開発に着手したのは、今から40年以上前のこと。以来、年々高まる排ガス規制に対応してきました。燃料電池用触媒の開発を先駆けて行ってきたのは、このような実績を通じて、燃料電池車の需要をいち早くキャッチしたからです。
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自動車業界の最前線でお客様と取引を重ねてきたからこそ、取引先の多くが燃料電池自動車の開発に注力してきた事実を前向きに受け止めたのですね。特にここ1、2年は国連が提唱したSDGs(持続可能な開発目標)が社会に浸透し、さまざまな企業が二酸化炭素削減などの取り組みを進めています。私がエヌ・イー ケムキャットに入社した年は今ほどSDGsが周知されていませんでしたが、だからこそ、燃料電池用触媒の開発に着手した当社の「先見性」を強く感じました。
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たしかに。青木さんは学生時代、農学を専攻したのですよね。
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学部時代に薬学を、大学院進学後は農学を専攻し、植物病害抵抗抑制剤の創製を目的とした研究に携わりました。エヌ・イー ケムキャットに入社したのは、技術力が高く、少数精鋭で触媒の開発・製造に取り組むなど、私の理想とする環境があると感じたからです。就職活動中、当社から内定の連絡をいただいたとき、「専門分野の異なる青木さんに期待している」という言葉をかけていただき、「異分野を専攻したからこそ、できることがある」と思いました。中村さんは入社以来、複数の部門で経験を積んでこられたのですよね。
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ディーゼル自動車向け触媒及びガソリン自動車向け触媒の開発に携わった後、つくば化学触媒室で燃料電池用触媒の開発を担うようになりました。現在は生産技術室で、自動車触媒の量産化検討や量産時のトラブル対応を担当しています。
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入社して実感したのですが、当社には私のように触媒とは異なる領域を専攻した社員が数多く在籍していますよね。それだけ、「触媒開発には幅広い専門性や知見が求められる」ということでしょうか。
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青木さんの言うとおりだと思います。特に燃料電池用触媒は新しい領域であり、どのメンバーも、「自分たちが燃料電池用触媒のパイオニアになるんだ」という気概をもっているのを感じます。
Talk theme 02年齢や役職の壁を超えた「ディスカッション文化」が、
当社の大きな強み
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多様な人材が集結していることに加えて、ディスカッションする文化が根付いているのも、当社らしさの一つだと感じています。
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同感ですね。部署内はもちろん、部署を超えて議論を交わすことも多く、このような文化が強みである技術力を生み出してきたように思います。私自身も、ディスカッションを通じてアイデアを得ることがよくあり、若手開発者の意見にハッとさせられることも多いですね。
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私も多様な専門性を持つ諸先輩方とディスカッションできるのをいつも楽しみにしています。例えば誰かが課題を提起すると、そのテーマに関連した専門知識をもつ社員が必ずいます。ディスカッションで得た知識を蓄積していくことで、さらに課題を深堀りしていく力も身につくので、「開発者にとってこれほど魅力的な環境はない」と断言したいくらいです。
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青木さんは現在、どのような業務を担当しているのですか。
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主に燃料電池用触媒の性能評価を担当しています。定期的に技術ミーティングを開催し、解析結果をもとに触媒の特性や課題点について試作者に問題提起しています。ほかにも外部機関との共同研究などを通じ、触媒の新たな特性を探索していますね。
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こうして話を聞いているだけでも、青木さんが高いモチベーションを抱いて生き生きと働いていることが伝わってきます。
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ありがとうございます。私たちは燃料電池の普及を見据えて触媒の開発に取り組んでいますが、未知の領域も依然多いだけに、手探りの部分も少なくありません。それこそ、どのような評価手法や条件のもとでデータを取るべきか、常に試行錯誤しています。
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市場が成熟している自動車触媒と違って、黎明期の燃料電池用触媒はコンセプトベースでの新規性の高い提案が求められますからね。
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中村さんは昨年まで燃料電池用触媒の開発を担当してこられましたが、当時、開発者としてどのようなポリシーを抱いていましたか。
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私は触媒の試作を担当していたので、求められる性能をいかに引き出すかが腕の見せ所でした。そこで、お客様にヒアリングを行う際には「開発の真意」を汲み取り、先回りをして提案をするよう心がけてきました。
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なるほど。触媒の性能評価も通ずるものがあるかもしれません。お客様の開発環境を推測した上で、クリティカルな性能評価を行っていく必要があるからです。中村さんの話を聞いて、改めて「お客様目線の大切さ」を感じました。
Talk theme 03共に力を合わせて、
燃料電池用触媒の先駆者となる
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ここ数年、燃料電池自動車の注目度が一気に高まりましたよね。
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今から数十年前、当社が自動車触媒の黎明期から触媒開発に取り組んできたように、燃料電池用触媒も黎明期から開発を担ってきました。今、燃料電池用触媒の性能評価を担当している青木さんは、まさに「燃料電池用触媒の黎明期」を支えているのだと思います。
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燃料電池自体は長い歴史をもっていますが、本格的に産業で利用されるようになったのは、ごく最近になってから。「カーボンニュートラル」や「ゼロエミッション」といった最新のテーマにアプローチしていることもあり、常に"未知の領域を開拓している"というワクワクした思いを感じています。競合他社と競い合うこともありますが、それよりも、「会社の枠を超えて、業界全体で1つのものを創り上げているような一体感」があって、そこに燃料電池用触媒の醍醐味があるように思います。
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本当に素晴らしい経験をしていますね。青木さんは、入社1年目から他の社員と対等に議論を交わしていましたよね。広く論文を読んで知識を深め、先輩とのディスカッションで得た「先人の知恵」と、自ら手を動かして得た「現場の肌感覚」をバランスよく備えている。とても頼もしい後輩だと思っていますよ。
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そんな風に褒めていただいて光栄です。私も中村さんから何度も刺激をいただいてきました。中村さんに評価結果の報告をすると、いつも「そもそも、なぜこの触媒を依頼したのか?」という根底からディスカッションを進めてくれますよね。説明が丁寧だし、私の立場や考え方を慮って接してくれます。その根底には、「試作者と評価者の相互理解」という目的をベースにした考えがあると思うのです。中村さんから開発者としての姿勢を学んだからこそ、今の自分があると感じています。
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話が盛り上がってきたところで、テーマを未来に移しましょう。青木さんは、目指している目標はありますか?
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これまで、評価装置導入や外部機関との共同研究など、さまざまなことを経験させていただきました。おかげで、まだまだ未熟ではありますが、だいぶ知識が深まってきたように思います。燃料電池はお客様ごとに設計思想や運転条件が異なるので、その全てを満足する万能な触媒はなかなか見つかりません。今後は当社の触媒の本質を理解した上で、お客様の実情に即した触媒の提案ができるようなスキルを磨いていきたいですね。最終的には、私が提出した評価結果を読んだお客様が「この条件で使うのなら、エヌ・イー ケムキャットの触媒しかない」と言っていただけるくらいに、圧倒的な存在感を発揮できるようになりたいですね。
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青木さんならきっとできると思いますよ。
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ありがとうございます。中村さんの目標もぜひ、聞かせてください。
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エンジニアリングチェーンといって、私が所属する生産本部で「研究開発→パイロット→量産」の一連の流れを全体最適させるための活動に取り組んでいるので、この取り組みを成功させることが当面の目標ですね。また、現在は自動車触媒の量産化を担当していますが、いつか燃料電池用触媒の量産化も担っていきたいですね。
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中村さんが量産化を担当してくださったら、これほど心強いことはありません。中村さん、これからもよろしくお願いします。
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こちらこそ。クリーンな社会の実現を目指して、共に前に進んでいこう。